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新着情報―桜丘中学・高等学校―

2015/7/16

今、南三陸へ行く理由「東北研修旅行」

5月、桜丘の高2全生徒が東北研修旅行を行いました。
目的は、東北地方の自然や歴史文化を学ぶこと、そして東日本大震災で被災した人々との交流とボランティア活動です。

桜丘では、震災の翌年よりこの研修旅行を行っており、現在も南三陸の人々との交流が続いています。9月に開催される桜華祭では、生徒会主導による被災地へのメッセージや義援金の募金活動、南三陸の郷土料理の紹介など、毎年継続して交流や支援活動を行っています。
そして交流の核となるのがこの研修旅行。参加した塩津那奈さん、梅田治輝君(共に高2)、引率した滝澤厚介教諭にお話をうかがいました。


被災地へ行く理由

滝澤教諭 2011年に震災があったその翌年から、被災地に行ってボランティア活動をすると同時に、実際に自分の目で見て、今何をすることができるのかを考える、そういった目的から始まりました。

1年目に訪問した際は、建物の上に船が乗っているなど、津波の脅威が爪あととして生々しく残っていたそうです。その惨状を見て、被災者の方の話を聞き、また救援活動に奔走している様子を知る。まさに今起こっていることを身をもって体験することになりました。(1年目の活動の詳細はSCHOOL vol.28からご覧になれます)

滝澤教諭 ただやはり年数が経つことによって、被災地のほうも復興が進み整地化されていっています。今回生徒たちも有名な防災庁舎となどを見ることはできたのですが、そういったものを守るべきなのかなくしてしまうべきなのか、あちらのほうでも考える時期にきている。実際に肌で感じることが難しくなってきている状況なんです。
今年の研修では、被災された方たちの話を聞く中で、コミュニケーションの大切さ、彼らが生きる上で何が大切かを考えていく。それと復興の過程。そういったところを見るように、徐々に違う視点に変わってきています。
またボランティアとして訪問しているのですが、あちらのほうから手を差し伸べてくれているケースもあり、今度は逆にこちらのほうから、こんなことやってみませんかと提案する時期にきているのかなとも感じます。


「生徒が学校を育てる」

桜丘では、研修旅行に行く前に、仙台大学の齋藤幸男教授を招き、事前研修講演を行っています。(この講演の模様は、桜丘のブログにも掲載されています)


滝澤教諭 最初に、この研修が何を目的とするのか、生徒たちに分かった上で行ってもらいたいという話をし、後日、宮城県石巻西高等学校の校長をしておられた齋藤先生をお呼びして、当時の状況をお話してもらいました。
その中で印象的だったのが「生徒を作るのも生徒である、生徒を育てるのも生徒である。教師を育てるのも生徒である。学校を作るのも生徒である」という言葉です。齋藤先生は被災地でそれを感じ、今はいろいろなところに行脚してお話されています。「私が当時のことを話すことが、亡くなった方への供養になると思うので、全国どこへでも行きますよ」とおっしゃっていました。

また齋藤先生は、石巻西高校の生徒たちの作ったモザイクアートを見せ、生徒たちの持つ力の大きさを語ってくれたそうです。


塩津さん 最初に「生徒は教員よりも全然大きな力を持っている」とおっしゃって、モザイクアートを見せていただきました。生徒たちだけでも、がんばることで大人の方の心を動かす力を持っているんだなと、心に残りました。
梅田君 齋藤先生は何回も、「生徒が教員や学校を育てていく、生徒たちの力のほうが大人よりもすごいんだ」とおっしゃっていました。大人の方たちは僕らよりも経験値が高いので、ここまで物事が進んでしまったらもうおしまいだと諦めてしまうけれど、僕らはまだ16年の間でしか比べられないから、希望を持つことができる。だから大変なことが起こったときに大人よりも子どものほうが周りを笑顔にすることができると。そういうお話が印象に残りました。

震災当時の思い出を2人はこう語ります。

塩津さん 校庭でクラスの友達と遊んでいたそのときに地震が起きて、ライトが大きく揺れて、プールの水が全部流れ出しました。体育館のタイルが剥がれ落ちる音がして、泣いている子もいたりと、恐怖でした。
梅田君 小学校の校舎の建て替えの時期で、プレハブ校舎にいるときにちょうど起きました。1年生から6年生までがいる中で天井の壁が全部落ちてきて、全員机の下に隠れました。まだ状況がわからない1年生が「電車だ電車だ」と騒いで先生に怒られたり。その後もいろいろと物を片付けたりと大変でした。

こうした事前学習により、惨状と当時の記憶を改めて認識し、震災から4年が経過した今、被災地はどうなっているのか、自分たちにできることは何なのかを考え、研修旅行へと出発します。


今できること、当時を知ること

今回の研修は2泊3日。そのうち2日目にボランティア活動が行われ、復興支援活動や仮設住宅訪問などをグループに分かれて担当しました。中には、多くの児童が犠牲となった石巻市立大川小学校に勤務されていた方からお話をうかがう機会もあったそうです。



塩津さん わたしはラベンダーの種とコットンの種を植えました。ラベンダーのほうは一つの小さい箱にどかんとあって、それを取り出して畑に一個ずつ植えていきます。コットンはきれいに、種同士の間隔が少しもずれてはいけないので、メジャーを使い端から端まできれいに並べて植えていきました。
作業中は現地の方にコットンとラベンダーについてお話ししていただきました。みなさん震災で被災された方で、何か自分たちでできることはないかと、自分の持っていた山を開墾してそれらを作ることにしたんだそうです。コットンもラベンダーも最終的に商品になります。また毎年ラベンダー祭というのを開催しているそうで、「ぜひ来てね」とおっしゃっていました。



梅田君 僕は仮設住宅を訪問しました。集会所に集まっていただき、最初に代表者の方から震災の話をお聞きしました。その後は、震災のことはあまり触れないで、はげますために僕たちにできることをやろうということで、テーブルをつなげてお菓子を食べながらみんなで向かいあって、どういう歌手が好きなのかとか、どういう遊びをするのかとか、みんなで楽しく話しました。途中でゲームをして、罰ゲームにものまねをしたり、校歌を歌ったりしました。最初は緊張したんですが、打ち解けていって、すごく楽しかったです。

また、宿泊したホテルでは、女将の方と南三陸の神社の女性神主の方から、震災当時の状況をうかがいました。


滝澤教諭 女将の方からは、当時のお話として、津波で多くの建物が流された中で、このホテルが周辺の岸壁が頑丈で残っており、救援活動を行ったことや、その後4カ月間トイレが使えなかったことなどをうかがいました。
塩津さん 神主さんは、震災で家もすべてなくなったときに「家も古里もなくなっちゃったなあ」と思ったそうなのですが、彼女のお子さんから「僕にはなくなった古里がある」と言われたというお話をうかがいました。もし自分がそんな立場にあったら、そういった考え方はできるのだろうかと考えさせられました。
梅田君 他にも、子どもがいるとなると、やっぱり一番最初に子どもを心配するというお話もされました。あと、花の中で椿の花が一番頑丈らしく、津波で流されても残っていたのを、そこに住んでいたおばあさんが見つけたそうなんです。そこで神主さんたちが、その一帯の復興活動で椿の花を植えて、また震災が起きたときの避難経路にしようと今取り組んでいることもお話いただきました。

他にも、初日と最終日には、松島や平泉などを訪れ、歴史や自然を散策で学ぶ自主研修も行いました。





これからのためにできること

塩津さん 多くの人が「何年かに一度大きな地震が起きているにもかかわらず、その教訓が活かされていない」と言っていました。その教訓が活かせていればこの前の大震災でも、こんなに多くの死者行方不明者を出さずにすんだのではないかと。ですので、もしこれから大きな災害が起きたら、自分は、震災で得た教訓と、この東北の研修で学んだことをちゃんと活かしたいなと思いました。
梅田君 防災庁舎は、以前はテレビで見ていてもよくわからなかったのですが、実際に拝見して、こんなにも大きな津波が当時来たんだなと感じました。ホテルに到着してからも、「ああいう津波が来た時に自分たちはちゃんと動けるのか」となるとやっぱり難しいのかなとか、それで全部失ってしまうのは苦しいなと考えたり。やっぱり行って、見て、実感することは大いにあったと思います。


左から梅田治輝さん、塩津那奈さん



研修旅行を終えると、その後フィードバックを行い、文集にまとめたり、9月に開催される桜華祭での展示を行います。
そしてこれからの研修旅行の展望について、滝澤教諭にうかがいました。


滝澤教諭 2012年に初めて訪れた時と比べて、南三陸も徐々に変わってきているので、何を学ばせたいのかというのは伝えにくくなってきています。ただ、やはり実際に行ってみないとわからなかったことがたくさんあるんですね。場所によっては高台を作る作業なども残っていて、まだまだ直さなきゃいけないところがあり、多くの方が工事をされている。しかし東京オリンピックの準備が始まり、今度はそっちにかなりの人員が流れていってしまうため、現場で苦労をされてる方がいるとか、そういったことを知ることは大切だと思います。
また、それとは逆に、お会いした現地の方々は、もちろん心に傷を負った方もたくさんいるとは思うのですが、みなさんすごく明るいんです。そういった方が、協力し合って復興活動していることも、ちゃんと知っておかなきゃいけない。だから生徒たちには実際行ってみて、いろんなことを感じてほしい。防災庁舎も、とても悲しい象徴だとは思うのですが、生徒たちもさまざまなことを考えたと思うので、ちゃんと見て、そして話を聞いて、自分は今、何ができるのかを考えてほしい。未来を考えるために、今学べることを学んでいってほしいと思います。

今回の研修旅行で出会った人々は総じて明るく、たくましさを感じたそうです。もちろん誰もがさまざまな側面を持ち、その表情にたどりつくまでにも多くの困難にぶつかってきたことも想像されます。しかし大切なのは今、何ができるのか、これからの問題にどう立ち向かっていくのか。それを考える契機として、実際に現地を訪れるこの研修旅行は、生徒たちにとって、またとない経験になるはずです。

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