SCHOOL 教育の心をつなぐ Visual Magazine [スクール]

中学・高校受験生のためのスクールライフビジュアルWEBマガジン

このサイトは中高一貫の魅力を、オリジナル記事とビジュアルで
伝えるスクールマガジン「SCHOOL」のWEB版です。

SCHOOLへのご意見・ご要望・お問い合わせ 定期購読のお申込み

TOP  >  学校を探す  >  共立女子中学高等学校  >  新着情報

新着情報―共立女子中学高等学校―

2014/10/21

【部活人】地理歴史部「ものづくりで自然を知る」

8月9・10日、東京ビッグサイトで全国高等学校鉄道模型コンテストが開催されました。全国各地から様々な学校の鉄道研究部が集まる中、共立女子中学高等学校からは地理歴史部が出展。約120校にも及ぶ出展校の中から優秀賞に選ばれました。


観覧者からも「どこか懐かしい感じがする」と好評だった作品
山梨県南アルプス市の棚田がモデルとなっており、同市の櫛形図書館で11月11日から2週間、図書館の好意で展示される予定です


鉄道中心ではない、斬新な観点からのリアリティが高く評価されたこの作品。どういった過程を経て作られたのか、また他校ではあまり見かけない地理歴史部の活動とは何か、お話を伺ってきました。

創部2009年
高校のみで活動。部員数は14名(2014年9月時点)。
活動場所は教室。主な活動は鉄道模型の制作(全国高等学校鉄道模型コンテストへの出展)。
活動日は基本的に火・木の週2日。年に数回、模型制作の取材や合宿などを行う。

今回の模型制作を中心になって進めた高校2年生の高橋萌部長と、顧問の池末和幸先生にお話を聞きました。

地理歴史部とは?

まずあまり聞き慣れない地理歴史部という部活動。その始まりは順風満帆なものではなかったそうです。
「元々は史学部と人文地理部という2つの部があり、人文地理部が部員数が足らず廃部にしようかという話になったんです。それを史学部と合わせて地理歴史部にしましょうと創部したのが5年ほど前です」(池末先生)
当初は部員数も少なかったそうですが、今年は高2が3名、高1が11名と増加。積極的にフィールドワークを行うなど多彩な活動を見せるようになりました。

活動の中心は毎年出展している鉄道模型コンテストの作品制作。また「とにかく行こうというのがこの部の一番の原則」(池末先生)と語るように、制作のための現地取材や、今年は群馬県の八ッ場ダムの工事現場を訪れ、水没が想定される地域を散策したり、農村部の家の造りを調査しました。他にも寺に参禅し座禅や写経を行うなど、現場に行き肌で感じる活動も盛んに行っています。





八ッ場ダムの工事現場


棚田のつくりかた

コンテストへの出展自体は4年目になりますが、現在の部員たちは、昨年ジオラマを作製した部員と入れ替わりの形で入部ました。過去の蓄積がない中、池末先生のアドバイスを受けながら、現在の高校2年生を中心に、まさしく手探りの状態で一から作り始めました。

「コンテストの半年前に場所の候補を決めようということになり、尾瀬や海外などの案も出たのですが、最終的に日本の原風景、美しい風景ということで棚田に決まりました。わたし自身、水面が夕焼けに反射している棚田がすごく好きで、中学生のときに地理の教科書の表紙に載っているのを見たりして、元々興味もありました」(高橋さん)


部長の高橋さん 中学時代は3年間美術部に所属しており
様々なアイデアが作品に散りばめられています。




棚田にはモデルとなった南アルプス市を含め、3回調査に訪れています


池末和幸先生 持っているのは棚田の土台の試作品


作品の特徴の一つが棚田の曲線。訪れた現地の地形が作品には丁寧に表現されていますが、最初はなかなか満足のいく形にはならなかったそうです。
「言葉では思い浮かぶんですが、実際に形にするとなると全然描けなくて」(高橋さん)

部員たちが悩んでいるとき、池末先生は答えを言わず、たまにヒントを出すだけにとどめたそうです。
「まず話を聞き、即答しないで考えて、OKなら自信を持ってやってくれと伝えます。逆にその方法はまずいかなと思っても、それじゃあ一度やってみようと試行錯誤してもらいました。これとこれをやってと指示を出しちゃったほうが簡単なのですが、彼女たちはアイデアを沢山持っていて、そこを活かしたかったので」(池末先生)

「どういう特徴があるのか考えていたら、棚田の曲線が関数の曲線に似ているんじゃないかと思ったんです。そうしたら地図の等高線も同じような形になっているのに気がついて」(高橋さん)

そこから棚田の特徴的な曲線を再現するために、様々な角度の写真を検討し、谷筋は狭く、尾根筋は広くといった、実際の等高線とほぼ同一になるように設計。またカーブラインには、実際に関数の曲線の考え方を取り入れるなど、こだわりを見せています。

また、作品には、現場を見なければわからない細部までが丁寧に表現されています。これは現地へ何度も訪れた経験が活かされていると池末先生は言います。
「抽象的ですが、現場に行くことで空気を感じることができます。たとえば農道の下に水路があって、生徒たちは靴を脱いでそこを歩くんです。『砂利が痛い!』など言いながら騒いで、肌で温度や痛さを感じる。そうしたものはネットではわからない経験です。だからどんなに情報を仕入れても、現場に行ったもの勝ちだよと、いつも言っています」(池末先生)


訪れた際、棚田の前で食事をした自分たちを登場させています



桃の木は現地同様ワイヤーで吊るし、収穫しやすいように手に届く高さに枝が伸びている様子を再現



『田植え』して作った水田


苗の長さ、水を張ったときの張力の様子を何度も実験を重ねて制作


そして部員たちが最も大変な作業と語ったのが水田の苗です。「妥協せずに作りました」と語るように、素材から試行錯誤を繰り返し、工程的にも最も時間をかけた作業となっています。
「最初はつけまつげを使ったのですが、ボリュームが足らず、また値段的にも大量に使うには不向きなのでやめて、他にも刷毛とか4~5種類ほど試した後、100円ショップで買える風呂用のブラシを選びました。これだと刺すことができ作業が簡単なのと、コストも安かったので。手順としては1cmほどに切って、ピンセットや手で刺していきました。2本ずつ束ねて一つ一つ植えていくんですが、それが難しくて」(高橋さん)

この『田植え』、分担作業をしても数日がかりの大作業だったそうで、コンテスト当日に部員の方にお話を伺った際も、「すごく疲れました」と正直な感想が出てきました。その一方で、後日改めて振り返ると、「慣れると意外と楽しかったです」「自分が意外と器用だとわかってわたしは好きでした」という声も。
「朝から夕方までずっと作業していると辛くなるときもありました。またわたしたちはコンテストの出場経験がないので、作品がどういった評価をされるのか不安もあって。でも池末先生が『これ絶対5位以内だよ』と言ってくれたので、それも頑張ることができた理由だと思います」(高橋さん)



右手に持っているのが苗の元となったブラシ、左手が試作品です


こうした労を惜しまない地道な作業に加え、ウェザリング(汚しをかけて質感を出す技法)など、表現の細部にまでこだわって作られています。設計段階から実作業まで、一つ一つを丁寧に積み重ねることで、リアリティだけでなく、その場の空気感や肌触りを感じさせる作品に仕上がっています。

作ることで自然を知る

制作にまつわる話を聞きながら、どうやって作品を生み出したのか理解した一方で、『なぜ地理歴史部がここまで情熱を注いでジオラマを作るのだろう』という疑問が湧いてきました。

「たとえば桃の木を作るとき、部員たちが『枝の付き方がわからない』と困って。じゃあ窓を開けて外を見たらと伝えると、『枝って横向いて生えてるんだ』と気付きはじめて。また現地に行ったときに桃に袋を付けたんですが、手の届く所に実がなっていた。それじゃあ他の木は? と。専門家になってほしいわけじゃなく、自然に対する思い入れをもってほしいんです。
現地に行き、ジオラマを作るときに改めて『あの幹ってどういう幹だっけ』『葉っぱはどのくらいの高さにあっただろう』ともう一度理解すると、自然への愛につながるのではないかと思います。たとえば今度その場所が開発でマンションが建つとなると、何を自然と共有させて暮らしていくか考えられるようになる。だから木1本作るのでも、苦労しながらでもやってね、とお願いします。すごく困った顔はされるんですが(笑)」(池末先生)

こうした思いを言葉ではなく、作業の中で部員たちは学んでいったようです。

「実は入部した当初、鉄道にも地理にも興味がなかったんです。でも池末先生が等高線の説明など色々と教えてくれて、現地に足を運び、作業を進めていく中で、地理にも歴史やドラマがあるんだということが分かって興味が湧きました」(高橋さん)
今年の作品を中心になって作っていった高校2年生は10月の共立祭で引退。これからは高校1年生が部の中心を担って活動していきます。

「高橋部長は誰よりも熱心で、毎日作品のことを考えていました。来年からは自分たちが中心となってジオラマを作っていくので、プレッシャーもあるのですが、先輩方に負けないように頑張っていきたいです」(高1・吉田さん)

作品と共に大きく成長していく彼女たち。来年は一体どんな作品を見せてくれるのか。もしかしたら、更に新しいことにもチャレンジをしているのかもしれません。
ものづくりで自然を、土地の歴史を学んでいく。地理歴史部だからできることは、まだまだ可能性にあふれているように思いました。


1年生部員たち 今年の共立祭(文化祭)で出展した個人製作を手に



共立女子中学高等学校ウェブサイト にて最新ニュースがご覧いただけます。