SCHOOL 教育の心をつなぐ Visual Magazine [スクール]

中学・高校受験生のためのスクールライフビジュアルWEBマガジン

このサイトは中高一貫の魅力を、オリジナル記事とビジュアルで
伝えるスクールマガジン「SCHOOL」のWEB版です。

SCHOOLへのご意見・ご要望・お問い合わせ 定期購読のお申込み

TOP  >  学校を探す  >  共立女子中学高等学校  >  新着情報

新着情報―共立女子中学高等学校―

2013/10/11

美術を通じて、自分の中の自分に出会う

時代を超えて「輝き、翔ばたく女性」を育むという教育目標を掲げ、豊かな情操を身につけることに力を入れている共立女子中学高等学校では、美術や音楽といった芸術科目も重視している。
実際にどのような授業が展開されているのか、美術科の上田祥晴先生にお話を聞いた。

■ 画法を学ぶことで苦手を払拭

中1では、頭がい骨をモチーフにして、まず影から描いていくグリザイユ法という画法を教えます。「ええーっ。頭がい骨?!」と生徒は驚きますが、人物画の基礎となる部分です。奥行きを持った写実的な描き方をするのは中1の最初ではむずかしいですが、物の見方であるとか形の捉え方というのを教えてあげれば、みんな描けるようになる。中学入学の時点で、美術に対して、苦手意識を持っている子はけっこういます。小学校であまり教えられてきてないんですよ。だから、できなかった子でもちゃんとした考え方で学べばできるようになるんだ、とまず考えを変えてもらいます。





■ 時代に合わせた表現方法で

次に、古典的な画法に相対する方法としてパソコンを用います。
写真のコラージュで空想画を制作します。ようするに絵を描く力を全く必要としません。生徒たちが撮影した動物や自分の写真を、グラフィックソフトを用いて加工して組み合わせます。シュールレアリズム(=超現実主義)の画家たちが始めたようなやり方です。頭の中で素晴らしいものが浮かんだとしても、実際に絵にするのはむずかしいですよね。そこで、とにかく描く力を使わないで、発想を最大限に活かす方法ということで、このコラージュも長く取り組んでいます。

このコラージュは、空想の動物を創るのがテーマなんですが、生徒の作品からヒントを得たものです。7、8年前に、ある生徒が「空想画」というテーマに取り組んだときに、すごくおもしろい合成動物の作品を創ったんですね。それが大きな反響があったので、次の年から合成動物をテーマに取り入れています。







■ 親子の会話を生み出す

中2では、パソコンで「洋楽」のCDジャケットを制作します。今の生徒たちは洋楽ってあまり聞かないんですよ。ですから、春休み中にお父さん、お母さんが若かったころに流行った曲などを聞かせてもらって、好きな曲を見つけてくるよう課題を出します。このように親子の会話を増やすことは今後も取り入れていきたいと思います。
パソコンに対しても苦手意識がある子はいます。でも、基本は鉛筆を握るのと同じ感覚でマウスを持つ、誰でもできるんだと感じるようになります。正統派の方法を教えた上で、どんどん使っていって、自分がやりやすい方法を見つけていくように指導しています。

■ 自分の心の中を見る

中2では、「想定自画像」にも取り組みます。これは、けっこうヘビーな課題です。想定部分で自分の心の中の景色を見つけていって、それと自分の姿を合わせるというやり方で、長く取り組んでいます。

どのような方法で、心の中の景色を見つけるか?シュールレアリズムなんですよ、基本は。シュールレアリズムの画家たちが、無意識の世界のイメージをどうやって絵にするか?いろいろな実験をしています。例えば、木目模様をみているうちに、「何かが見える」「魚がみえた」。じゃあ、魚を起こしてみよう。とはいえ、ここに魚がいるわけじゃないですから、魚を見つけているのは自分の心。つまり、自分の心の中を見つけているのと同じだということです。

それと同じように、真っ白なボードに、最初にいろんな絵具を飛ばしたり、流したりしてつけさせて、ぐちゃぐちゃの模様を作らせます。何がなんだかわけがわからなくなった時点で、「ここに何が見えるか見立ててみよう」と見えてきたものを書き起こさせます、だーっと。そこで出てきたイメージが背景に残っていることが多いです。後は進むに従って、別のイメージが出てきたりします。

できあがった自分の世界の上に、主人公として自分を載せるんだったら、どんな姿でどの位置に描くかを考えさせます。自分の姿はあくまでも観察図で写実的にいきます。人間に光が当たったらどういう風に見える、影の部分はどうなる、と手順を追って描き上げます。

■「中学2年生」

最初に暗い絵具で下地作りをするので、どうしても暗い絵が多くなります。物理的に仕方のないところです。それに、中2くらいでは、自分を見つめた時にあんまり明るいイメージが出てこないのが普通でしょうね。中2というのは、こういうテーマに取り組むのにちょうどいいと思います。世界との付き合いとか自分の世界が広がりつつあるなかで、自分の立ち位置をどう決めよう、と模索している状態。そういった時期に冷静に自分を見られる子は問題ないです。何か心に問題を抱えている子は鏡を見ることも多分できない…。自分と向き合えない状態というのは一番心配ですね。幸い、ここの所、そういう子は見られません。みんないい自画像を描いています。





■ 美術史の授業で教養を身につける

中3では、オリジナルテキストを用いて美術史の授業を行います。ルネサンスから現代までの流れを、作者と作品を挙げながら説明していきます。

その後、そのテキストの中から自分の好きな画家を選んで、好きな絵を模写します。その作家の生い立ちなど背景を勉強して、技術的なところも学んでいきます。どういう絵具を使っているとかどういう手順で絵を描いているといったことも研究しながら、下塗りからやっていきます。絵具の盛り上がりまで全部再現するようにしており、中学生にしては精度の高い模写になっています。







■ 日本の美術教育とは一線を画す共立の美術

共立の美術の特色は?と言えば、「全部教えます」ということです。描き方、見方から本当に細かい道具の使い方まで教えます。だから、誰でもできます。日本の美術教育では、「好きにやりなさい」「自由に描きなさい」という教えない教育が主流だと思います。しかし、自由にやる方法を知らないですから。だから基本の描き方、きちんとした学術的な物の見方、それを知っていれば、あとはそこから自由にいろんなことができます。画一的な指導で基本路線を学ばせつつ、そこから発想を広げさせます。

それから、こだわりが一つ。作品には「画家としてのサインを入れなさい」と指導しています。完成作の証として、サインを入れる。作者として、自分の創った世界に責任を持つということですね。







■ 高校では選択授業

高1では、油絵の具で自画像を描きます。バロック風のしっかりとした重々しい自画像に取り組みます。それから、漫画表現。パソコンを用いて「主人公は共立の先生」というテーマで仕上げます。ほとんど実話なんでしょうけど、おもしろいですよ。共立祭のときに美術室で展示します。高校生になってくるとみんなマウスが巧みになってきますね。


「そして輝く…」




「先生質問があります」



■ 3年連続芸大建築科へ進学

高2では、建築デザインに取り組みます。昨年はパソコンで理想の自宅と幼稚園のデザインをやりました。この課題を始めてから、芸大建築科に3年連続して入っています。これをきっかけに興味を持つ生徒もいるんだと思います。

■ 抽象画で自分の内面を表現する

高2の後半は抽象画です。学校で取り組むのはなかなか難しいので、やっているところは少ないと思います。抽象的な表現をしろと言われても、どうしたらいいか戸惑いますよね。「どうやったら誰にでもできる抽象画になるか」。美術科の教員で長い時間考えました。

まず、パソコンで下書きを作ります。春夏秋冬という4枚のイメージを書かせます。それから、喜怒哀楽という4つの感情を書く。その8枚の絵を重ね合わせて一つのものにし、いらないところを省いて必要なところを強調して、できたイメージをプリントします。それが下書きになります。 そして、その下書きを絵具で再現していく。形がだんだんできてきて、絵具が重なってくると、目に見えるものからの刺激は強いですから、下書き関係なしにどんどん展開していけるようになります。

そこまでして、なぜ抽象画にチャレンジするか。これまで、ずっと具象できています。具象って自分の姿を見つめ続けるような課題が多いので、けっこうしんどいんですね。なので、今度は自分の姿形を見るというわけではなく…。と言っても、結局これは自分なんです。自分の外見じゃなくて内面を出すことで自分を表現してみようということです。

高3の最後に制作する「理想的他者の肖像」も同じです。ずっと自画像できて、最後に「理想の人物像を描いてみよう」。実は、これは自分がこうありたいという理想の姿なんです。

これで無事に卒業です。


抽象画


抽象画




「理想的他者の肖像」




「理想的他者の肖像」



■ 生徒に学んでほしいこと

美しい人生を送るための感性を磨いてほしいですね。そのために、美術の授業があるわけですから。校内のいたるところに、近代美術館に飾られているくらいのレベルの画家を中心に、本物の絵画が飾られています。美術館に行かなくても、いつも作品に出会えるって、すばらしい環境だと思います。

共立の生徒たちは、昔から本当に素直。いい状態のときも悪い状態のときも素直に自分を出す子が多いです。また、教わる姿勢ができているので、教えることが本当におもしろいです。


上田祥晴先生



共立女子中学高等学校ウェブサイト にて最新ニュースがご覧いただけます。